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2013年05月20日
「マイナンバー」は使えるか? Part2
国民総番号にしても、導入についての最大の問題は、個人情報が悪用される可能性があることです。世界の主要国で、国民の番号制度を導入していないのは日本だけのようです。そこで先に導入している国を見てみるとやはり最大の問題は、番号を悪用されて国民に被害が出ていることです。
例えば、アメリカでは、社会保障番号として導入されていますが、その番号をいろいろな機関が流用しています。大学その他の学校の学生番号として使っていたり、クレジット会社の会員カードの番号として使っていたりします。そうするとその番号を悪用されて金銭的な被害が出ているケースが結構あるようです。また、韓国でも同様の被害があると聞いています。確かに一つの番号であらゆることができればできるほど便利にはなります。しかし、その反面悪用されるケースが増えて、被害に会う機会も格段に増えることも事実です。
現在利用方法が将来的にほぼ確定しているのは、マイナンバーを記載したカードを発行し、それに健康保険証の機能をもたせ、医療機関の診療履歴及び薬歴の管理ができるようにすることです。これは、カードの所持者が過去にどのような病歴を持っていて、それに対してどのような医療機関を受診したか、またどのような薬を処方されたかが履歴としてわかるようにすることです。1つの病気に対していろいろな医療機関をはしごし、その都度同じような検査や薬を処方されたりし、無駄が非常に多いことが指摘されています。それに対する方法として、レセプト(診療カード)の電子化を導入したり、「お薬手帳」を発行したりして、無駄な受診や検査・重複する医薬品などを防ごうとしていますが効果を挙げているとはいえません。
特に、レセプトの電子化は導入されて数年が経過し、すでに大半の医療機関で導入が進んでいる予定でしたが、ITになれない医師が多い(特に高齢の医師を中心に)、導入の費用が高額、打ち込みに余計な人件費がかかる等の理由で、開業医を中心にあまり進んでいません。最初は導入しないと診療報酬が減額されるなどの強制的な導入を目指したようですが、医師会の強硬な反対でそれも先送りになっています。レセプトの電子化やマイナンバカードの健康保険証化は増え続ける医療費の削減に大きな効果を発揮しそうですがなかなかすんなり導入することは難しそうです。
もう一つ番号制度の導入の目的は国民の所得の把握にあります。もともと『国民総背番号制』と呼ばれていたころの導入の目的はむしろこちらにありました。健康保険証としての機能の次に導入を予定されているようです。
給与所得者は税の申告を自分でせず、年末調整という方法で給与支払い者、つまり会社が代わって行っているため、脱税がしにくく、その所得の捕捉率はほぼ100%です。ところが、自営業者や農業・林業・水産業従事者の所得の捕捉率は、『クロヨン』とか『トーゴーサン』・『トーゴーサンピン』とかなどといわれるように、給与所得者に比べて非常に低くなっています。これが国民、とくに給与所得者に不公平感を持たせる大きな理由になっています。
ちなみにご存知の方も多いかと思いますが、『クロヨン』とは、給与所得者、自営業者、農業・林業・水産業従事者の順に所得の捕捉率が、9割・6割・4割ということです。それを、給与所得者を10割としてはじき出したものが『トーゴーサン』で、同じ順番で、10割・5割・3割となり、それに、政治家の1割を加えたものが『トーゴーサンピン』です。政治家の1割というのがミソで、番号制度の導入を妨害(?)したのは、実は一部の政治家なのかもしれません。
いずれにしても、選挙の圧力団体といえる組織などが妨害したことは、想像に難くありません。ところは今回に関しては、税金の面というより社会保障に利用するという目的のためという側面が強いため、さほど大きな抵抗とはなっていないようです。
最近特に懸念が広がっているのは情報の漏洩です。IT化の最大の問題といっていいかもしれません。システムのセキュリティの強化がさまざまになされていますが、システムのハッキングやデータの漏洩が後を絶ちません。
マイナンバーも正しく使用すれば、あらゆる面で利便性は大きく向上します。しかし、一部の既得権益を守りたい勢力が何かにつけて反対し、また悪意のある人々がいろんな妨害を試みたりして、十分でかつ安全な制度はこれからも基本的に存在しないでしょう。
しかし、危険性があるからと利便性の高い制度の導入をせず、従来のままのやり方を踏襲するだけでは社会の発展はありません。どのような制度を取り入れるにしてもプラスの側面とマイナスの側面があります。プラスを極大化しマイナスを極小化すればいいのですが、それには膨大なヒストもかかります。結局はそのところの折り合いをどうつけるのかが問われているのではないでしょうか。
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