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2012年04月20日
パワーハラスメントの定義

 従来パワーハラスメントの定義については、セクシャルハラスメントと違って、法律上の定義がなく(セクハラの定義は『男女雇用機会均等法』)、さまざまな機関・NPO等から発表・報告・書籍等の形で出ています。

 

 今回、『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議』が発表した『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する報告』内に初めて公式に定義づけられています。

現時点ではパワハラの定義について、法律上に規定はされていませんが、厚生労働省が設置した公式な審議会が発表した見解なので、今後あらゆる場面で用いられ、また、法律に盛り込まれる場合は、この定義が使われることになります。

 

定義

 『職場のパワーハラスメントとは、同じ職場に働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為をいう。』

 但し、優位性に関しては、『上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものを含む』とされています。

⇒上司から部下へというものが多いが、先輩・後輩間や同僚間、部下から上司に対しての行為も含まれる。

 ⇒上記の以外にも、顧客や取引先から、取引上の力関係などを背景に、従業員の人格・尊厳を侵害する行為がなされるなどもあります。

 ⇒『職場内の優位性』には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識などのさまざまな優位性が含まれます。

 ⇒『業務上の指導との線引きが難しい』という見解に対しては、『業務の適正な範囲を超える』という趣旨としている。

 ⇒直接的に『精神的・身体的苦痛を与える』だけでなく、『職場環境を悪化させる行為』も含まれるとし、この枠組みは、セクハラと同じ解釈となっています。

 

 

類型

① 身体的な攻撃(暴行・傷害)

② 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

③ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間はずし・無視)

④ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

⑤ 過少な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

⑥ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 ⇒①~③については、通常、業務の遂行に必要なものではないため、基本的にパワハラに該当すします。特に①と②については、刑事事件になる可能性があります。

 ⇒④~⑥については、「業務の適正な範囲を超える」かは、合理的な判断基準を会社内で共有しておく必要性があるとされています。

 ⇒この①~⑥以外であってもパワハラに該当すると判断される場合があるとのことです。

 

 民事上の個別労働関係紛争相談件数で、「いじめ・嫌がらせ」に関するものは平成14年度には、第4位でしたが、平成22年度には第2位となっていて、ここ最近の状況は深刻になってきているといえます。

 そのもっとも影響が大きいものは、パワハラを受けた当該人が、退職するという問題だけではなく、職場環境の悪化により、社内のモチベーションが下がってしまい、職場全体の生産性が下がってきてしまうことがあげられています。

 「パワーハラスメントの実態に関する調査研究(平成17年中央労働災害防止協会)」でも、パワハラが企業にもたらす損失として、

 「社員の心の健康を害する」(83%)   「職場風土を悪くする」(80%)

 「本人のみならず周りの士気が低下する」(70%)

 「職場の生産性を低下させる」(67%)   「十分に能力の発揮ができない」(59%)

となっています。

 

 問題の背景には、職場内のコミュニケーションの希薄化や問題解決機能の低下、上司のマネジメントスキルの低下、上司の価値観と部下の価値観の相違の拡大などがあげられています。

 「最近の若い人は耐性がなくなってきている、我々の若いころはこんなことぐらい普通にあった。」という傾向が多少あるにしても、それが原因とばかりに対策を怠っていては状況はひどくなるばかりです。会社全体の問題として取り組む必要性が今後ますます重要になってきています。

 

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