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2014年06月20日
ホワイトカラーエグゼンプションがまたやってきた

 政府の下に『産業競争力会議』が設置され、アベノミクスの第3弾の規制改革について検討し、政府に対して提言をするようになっています。

 『規制改革』『規制緩和』『構造改革』などといい続けて、『土光臨調』の頃からでも、もう既に40年近くたっています。『ニクソンショック』に始まり『繊維摩擦』、『オイルショック』、『自動車摩擦』、『プラザ合意による円高』などなど日本を取り巻く国際政治情勢や経済情勢によって、政府による規制改革・構造改革が行われ、さまざまな国内産業がそれに対応すべく変化を遂げてきました。

 その結果、いろんな荒波にもまれた産業ほど、産業構造の改革や研究開発・イノベーションによって生産性があがり発展してきました。勿論その過程には個別企業やその産業そのものが、衰退・倒産・廃止の憂き目に会って着た事実があります。しかし、全体としては産業競争力がつき発展したこともまた事実です。

 

 そこで最後に残っているのが、『岩盤規制』といわれる農業・医療・福祉・雇用の4つの産業であり、分野です。

 第1次安部内閣の時代に『ホワイトカラーエグザンプション』として、雇用の中の労働時間の自由化について規制改革を行おうとしましたが、『賃金不払い制度』と野党やマスコミから本来の趣旨からかけ離れた議論にもっていかれ実現しませんでした。

 今回の労働時間規制の緩和の制度も前回の労働時間規制の緩和と基本的に同じですが、今回はさすがに前回の轍を踏まないように、『ホワイトカラーエグゼンプショク』という言葉は避けています。

 日本のブルーカラーの労働生産性は世界でも一流ですが、ホワイトカラーの労働生産性は欧米に比べて大きく見劣りするといわれています。このホワイトカラーの労働生産性を上げていかないと、諸外国の優秀な企業や労働者を呼び込むことができないといわれています。今後日本は人口の減少に伴い、生産年齢人口の減少が避けられませんし、実際に減少し始めています。

 日本は単純外国人労働者の流入は制限していますが、一部の技能労働者や研究者や企業経営者等の優秀な外国労働者は一定範囲で受け入れています。ところが硬直的な労働規制がネックになってスムーズな受入れが実現できていません。勿論、労働時間規制だけが問題ではありませんが、受入れが進まない一つの要因になっています。

 

 給料を労働時間の対価ではなく仕事の成果に対して支払う職種(特にホワイトカラー)があるべきだと思います。現状時間外労働が多い職場で、残業代目当てで仕事をしている人は皆無ではありません。また、事業主や上司の中には残業をしていると良く仕事ができると本当に思っている人もいるようです。

 ホワイトカラーエグザンプションのキモは、仕事の成果によって給料の額が決まるということですから、仕事のやり方というよりは仕事の与え方が重要になってきます。ホワイトカラーエグザンプションによって仕事をする人より、その人に仕事を割り振っていく上司の能力が問われるといえるでしょう。このことは一部ホワイトカラーの仕事のやり方が劇的に変わるかもしれません。

 勿論、この制度を悪用し、単に長時間の仕事をさせるだけの会社は、どんどん従業員が辞めていくでしょう。これからは景気の回復によることと人口の減少が進むため、人手不足が進行し、労働市場は労働力の売り手優位の時代が続く可能性があります。仕事で成果が上げられない人はそれなりの給料になりますし、成果が上げられる人は長時間労働とは無縁の世界に生きることとなるでしょう。

 まさに今だからこそ労働生産性を上げるために必要な制度といえます。

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