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2003年10月18日
労働条件の変更について

労働条件の変更で会社の事業内容・仕事の業務内容が変わることによる人事異動・配置転換の問題はどの会社でも起こりうる問題です。  その場合の会社側の対応と従業員個々の対応について、裁判になった事例も結構あり、また裁判に至らなくても行政の相談所に持ち込まれたり、当事者同士で話し合われたりしていることも相当な数が存在しています。  会社側の対応として最低限必要なことは、あらかじめルールを決めておくということです。つまり就業規則に、会社の事情で各従業員の個別事情に配慮するとしても、人事異動・出向・配置転換はあり、業務の都合上行われる措置に従わなければならないと規定しておく必要があります。  特に、事業方針・経営判断については企画立案実施の決定がなされるのは、事業主または経営担当者の専管事項ですから、決定に至るプロセス上で従業員に対して意見を聞くことがあったとしても、実施が決定されてしまうと、その内容が公序良俗に反しない且つ企業経営上合理的に必要であれば従業員としては従う義務があるということになります。例えば、ニュースの中で取上げられている業務のIT化や新規事業に打って出るといった事例は普通にあることです。  勿論、IT化等は比較的年齢が高い層には拒否反応を示す人もありますが、十分な教育訓練を実施する、その業務を実施するにはそのスキルが全員に必要という理由があれば、それに対応できない人は自ずと他の場所に移ってもらうということは許容されることになります。  ただし、すぐに解雇するということはまた別の問題になってきます。十分教育したが当人の事情によりスキルアップが期待するほど伸びない、配置転換に適した職種が会社の中にはない、配置転換をしたがその職種の平均的な給料は配置転換される人の給料より安いので給料を下げた、配置転換をした所で反抗的な態度をとり他の従業員の職務の遂行に悪影響が出るなどの事情が出てくれば、基本的に普通解雇は許容されることになります。  もう一つよくある事例で、「業務遂行能力が他の人に比べて著しく低いので辞めさせたい」というケースです。この事例は個別判断によって解釈がいろいろあります。  まず、入社の条件としてある一定以上の、または特殊な能力を必要とする場合です。例としては、経理事務要員の責任者を募集する場合、会社として事務処理能力のほかに管理能力等に一定の水準を設けるはずです。その水準は他の一般事務要員と比べて当然違っているはずですし、また給与水準に差をつけている会社も多いと思います。このような場合は、合理的に見てその水準にあるかないかはすぐに判定が可能でしょう。そのときは職種の変更(一般事務)する余裕が会社にあればまずそのような手を打つことが第一ですが、もともと経理事務のポストが一つしかなく、他の一般事務も一人とか二人しか必要ない場合で、そこには欠員がないときは、解雇もやむをえないといえます。  また、端的な例で実際に裁判例になっている話ですが、営業部長を人材紹介会社(いわゆるヘッドハンティングの会社)から紹介を受けて雇用したケースで、成績が上がらなかったため、解雇して裁判で争われ、その解雇が有効とされました。  つまり、採用の条件がはっきりしていて一般的に見て相当高い能力が必要とされる職種や人材の場合は解雇をしても比較的許容されることが多いようです。ですから誰でもできる仕事で高い能力も必要のない業務であれば、仕事ができないという理由だけでは解雇が少し難しくなります。

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