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2003年09月20日
変形労働時間制を採用していますか?

 少し前からサービス残業が話題になっています。ここ最近では、全国の労働基準監督署がサービス残業の撲滅を目指して、積極的に摘発を行っています。  また、厚生労働省からサービス残業を摘発され従業員に対して支払った数字が公表されています。100万円以上支払った企業数と金額ですが、大阪府の場合、平成14年度で、52企業で総額約8億4千万円に上っています。また、平成13年度の場合は、それぞれ27企業で約5億8千万円となっていまして、企業数・金額とも大幅に増えています。  特に大阪府の管轄労働基準監督署では、「サービス残業撲滅キャンペーン」と銘打って徹底した摘発に乗り出していますので、企業数・金額とも今年度も増加しそうです。その方法は、夜遅くまで明かりがついている事業所に目星をつけて、何回か確認したうえで、その事業所に立ち入りし、出勤簿・タイムカード等をチェックし、それを賃金台帳と比較して割り出していくようです。  特に、象徴的な事件としてサラ金の武富士が数億円に上る残業に掛かる未払い賃金を支払うよう是正勧告を受けたのは、記憶に新しいことです。  一般的に労働基準法では、1日8時間、1週間で40時間を超えて働かしてはならない(労基法第32条)、と定めています。その時間数を超えて時間外労働を行わせるには、就業規則には業務上やむを得ない場合には時間外労働を行わせる旨定め、尚且つ過半数組合または従業員の過半数を代表するものとの書面による協定を締結し、それを所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。しかし、休日・時間外労働の協定も、無制限に残業を認めているわけでなく、1日4時間、1週間15時間、2週間27時間、4週間43時間、1ヶ月45時間、2ヶ月81時間、3ヶ月120時間、1年間360時間とそれぞれの期間の上限の時間が定められています(労働基準法第36条の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準)。ですから、その上限を超えると勿論違法になりますから、その上限を超えた労使協定は無効になり、所轄労働基準監督署で受け付けてもらえません(特別条項付きの36協定という方法がありますが)。  ところが、労働基準法に休日労働と時間外労働の規制が及ばないものとして、管理監督の地位にあるものと機密の事務を取り扱うもの等が指定されています。これの主な対象は、管理監督の地位にあるものとは、事業主・役員・管理職を想定し、機密の事務を取り扱うものとは、役員以上についている秘書のことです。  そこで対策としてよく行われるのは、支払う給料を月給制にして役職名をつけて全員管理職にする、または支払う給料の中に休日出勤手当てと残業代を含んでいるという解釈をするという方法です。しかし、管理監督者の定義は、従業員に対する業務指揮権や人事権を持っていてその責任を負うもの、となっていますから部長職以上、少なくとも大企業の課長以上がそれに該当するとされています。しかも名称ではなく実態として行われていなければならないとなっていますので、課長と名称がついていても部下がいなかったり、上司の業務の指示を受けないと業務を行う権限がないものは管理監督者とはされません。勿論ルーチンワークを指示なく行っているというケースも管理監督者とは認められません。  そこで、業種・職種によっては、変形労働時間制を採用することによって時間外労働に対する割増賃金を削減できるケースもあります。 変形労働時間制は、 1.1ヶ月単位の変形労働時間制 2.フレックスタイム制 3.1年単位の変形労働時間制 4.1週間単位の非定型的変形労働時間制の4形態があります。  これはサービス業や製造業などで、1週間、1ヶ月、または1年の間に、あるいは季節ごとに業務の繁閑がある業種に有効です。また事務職でも繁閑がある部門では有効に取り入れることが可能です。  それぞれの変形労働時間制は導入しやすかったり、使いにくかったりしますし、また業種・規模によって採用できない変形労働時間制もありますので一度ご相談下さい。

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