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2012年06月20日
無断欠勤の懲戒解雇について(2)
懲戒解雇を即日に行い、『解雇予告除外認定申請』を行った結果、『不認定』となった場合、会社はどのような対応を取るべきでしょうか。
対応方法は3つあります。
ひとつは、事後になりますが解雇予告手当を支払うという方法です。これは何とも締まりのない結果となってしまいますが、労働基準法違反について監督署ともめることになると少々煩わしいということで早々にこの件の幕引きを図るためです。
次は、解雇日を当初の解雇日から30日後へとずらしてしまう方法です。これも後の手間すなわち、社会保険・雇用保険等の資格喪失日が変更をする手間がかかったり、その30日間の給料の取扱いを、会社都合の休業として休業手当の支給が必要になったりしますので、すっきりとはいきません。
ただ、30日分の解雇予告手当よりは支払額が大幅に少なくなります(解雇予告手当の概ね40%程度)。
3つ目の方法は、そのまま押し切るという方法です。先月号でも解説いたしましたが、『解雇予告除外認定』がそのまま懲戒解雇の即日解雇の可否の判断の理由にはなりませんので、会社がこの懲戒解雇には、『客観的に合理的な理由、社会通念上相当』と判断できるならばこの方法が最善となります。
問題は、本当に『客観的に合理的な理由、社会通念上相当』と言えるかどうかです。残念ながらそういえない場合が相当あるというのが実感です。
そこで、以下は無断欠勤を行う従業員対策です。
絶対的な大原則として、放っておかないということです。必ず欠勤の理由・欠勤の日数を確認すること、欠勤の予定に数が経過する前に状況を確認することが必要です。
できるだけ無断欠勤の状態を作らないことです。これが不良社員を生まない大原則です。
従業員が確信的に欠勤をするのであれば、つまり退職を考えているのであれば対策は早くなります。
よくあるケースは、突然理由も告げずに休んでしまって、連絡が取れなくなることです。そのまま退職してしまう場合でも、本人の意向を確認する手続きは必要です。これは、自己都合退職にするため、本人が会社都合だと主張しても安定所等に認めさせないためです。
従業員に連絡が取れないのであれば、会社に申請している自宅を確認する、家族に連絡を取る、内容証明郵便等受領が確認できる書面で出勤を促す等の手続きを行います。
それでも連絡してこない場合に退職の意思ありと解釈し、自己都合退職の手続きを取ります。この場合、離職証明書は原則として発行手続きをせず、後日本人から手続きの要請があれば、その時点で退職届等を取ればよろしいと思います。
法的に完全を期すのであれば、内容証明郵便等で連絡を試みても、受領者がいないなどで返送される場合などは、『公示送達』という方法があります。管轄の簡易裁判所にて、手続きを行い、裁判所が公示し2週間を経過すれば、本人に会社の意思が到達したとして、会社の法的な手続きが完了し退職の手続きに移ることができます。
次に、従業員に退職する意思がなく無断欠勤を繰り返す場合です。この場合は原則として無断欠勤1回毎に懲戒処分を行います。
各社ごとに定められている就業規則の懲戒事項の内容にもよりますが、最初は訓戒(厳重注意する)若しくは戒告(厳重注意したうえで始末書を取る)を行います。
今まで無断欠勤したこともない従業員が、たまたま無断欠勤してしまった場合は、懲戒ではなく単なる上司による口頭注意でもよろしい(ただし、無断になった理由ははっきりと調査をしておくべきです。単なるうっかりミスなのか、ひょっとしたら家庭の事情か、身体的な都合か、精神的な事情があるのかなど、労務管理上本人だけに解決を求めるだけでなく、会社もその解決に関与していくべきです)が、遅刻があったりしてやや勤務態度がルーズな場合は、その都度厳しく会社の態度を示す必要があります。
口頭で注意をすることはどの会社でも上司が行っていることでしょうが、懲戒処分としての口頭注意を早い段階から実施しておくことが、のちの不良社員化を防ぐことになり、また最終的に懲戒解雇の処分を行うための必要な手続きになります。
2~3度訓戒・戒告処分を実施したうえで、それでも改善しない場合は処分のレベルを出勤停止なり減給等に引き上げます。その処分も1~2回実施しますが、さすがに短い期間(2~6ヶ月)でここまで処分が続くと、最後は「諭旨退職」もしくは「懲戒解雇」となります。
ただ単に「無断欠勤2週間」だけでは「懲戒解雇」をしても『客観的に合理的な理由、社会通念上相当』とは言えませんから、『解雇予告除外認定』は出ませんし、裁判で争いになった場合も勝てる状況にはなりません。
労務管理は非常に手間暇がかかりますが、それをおろそかにしては労使間の争い事は多発してしまいます。最も間違った対応で、最も多い対応が、無断欠勤をはじめとした会社のルール違反をする従業員に対して日頃はさほど注意せずに、急に大きな注意をしたり、突然に大きな懲戒処分を発したり、挙句の果てはいきなり懲戒解雇を検討するということです。
何事もこつこつと、問題は小さい段階で解決する姿勢が重要です。
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