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2003年06月20日
パートの厚生年金適用拡大へ

 従来、社会保険(厚生年金・健康保険)の適用基準が『通常の労働時間の概ね4分の3以上』というあいまいなものから法律の条文に明記される形で、パートに厚生年金の適用基準が変わります(健康保険は現在のところ従来どおり)。  新たな適用基準は、1.週の所定労働時間数が20時間以上、2.年収が65万円以上です。 具体的には、労働時間が1日3時間なら週6日勤務以下、1日4時間なら週5日未満 (5日ちょうどなら適用)、1日5時間なら週4日未満でないと適用になります。また、時給との関係で、1日3時間で週6日勤務の場合でも、723円以上なら65万円を超えてしまいます。    723円×3時間×25日×12ヶ月=65万700円 実際には交通費も含みますので、パートに交通費を支給している事業所ならもっと時給が低くても適用されてしまいます。  では保険料がいくらになるかといえば、1日4時間で週5日勤務、時給800円のケースで計算しますと以下のようになります。(交通費の支給はないものとする)    800円×4時間×22日×12ヶ月=844,800円    844,800円×1000分の135.8÷2=57,361円(事業主負担分のみ) また、所得税の配偶者控除・配偶者特別控除の適用基準の103万円未満を基準として計算しますと、    1,030,000円×1000分の135.8÷2=69,937円となります。  実際には、標準報酬月額が基準となりますので、ぴったり正確な金額ではありませんが、パート従事者を主力にされている事業所では、実に大きな負担になります。  対策としましては、 1.勤務時間数を基準にして、1日の勤務時間数を減らすか、1週間の勤務日数を減らす必要があります。 2.付帯経費を出来るだけ掛けない   精皆勤手当・交通費などを見直すことが必要です。精皆勤手当は支給しない事業所が多くなっていますし、特に比較的新しい事業所では殆ど支給し ていないことが多いようです。   交通費は勿論必要経費ではありますが、所得税が非課税になっているだけで、給料であることには違いありません。社会保険・労働保険では給料に 含めて保険料の計算をしています。ですから、上限を設けることや、定額とする、あるいは支給しないことも選択肢として考えてもよろしいのではな いでしょうか。 3.時給額を本人の能力などに応じて支給する。   支払う給料を今までより下げますと、労働条件の切り下げになってきますので、ただ保険料の負担がきついからという理由では、切り下げの理由と は認定されません。そこで、人事考課を実施し従業員のやる気と能力に応じて金額を弾力的に運用することが必要になるでしょう。つまり、就業規則 を整備しなおして能力主義を採用することを明記し、それに応じて運用するということです。  パートを補助戦力として見るのではなく、正社員より仕事が出来る人はいくらでもいますので、より積極的に活用していくことが必要でしょう。 4.給与を時間で決定する。   少し乱暴に見えるかもしれない方法ですが、正社員をなくすのもひとつの考え方です。実際にスーパーのような大規模小売業の中には、店長以外  は殆どパートばかりというところもあります。実際の働きに対して時間給の比較がはっきり出てきますから、生産性が上がっている人は、時給が高  く、生産性が低い人は安いということが一目瞭然はっきりします。

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