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2003年11月20日
国民年金保険料の滞納について

 中小零細企業では、社会保険料が高くつくため、始めから会社を厚生年金・健康保険の適用事業所としていない、適用事業所としていたが全喪の手続きをして適用事業所とならなくした、被保険者を限定したものだけにして多くの人の届出をせず被保険者としていない、等々の方法により経費を切り詰めておられるところが見受けられます。  そのことの是非(当然違法ですが)をここでは申し述べませんが、厚生年金・健康保険の適用を受けてない人は国民年金・国民健康保険に加入することになるのですが、その保険料を未払い滞納している人が非常に多いことが問題になっています。特に20歳台の滞納率がほぼ50パーセントに及んでいます。  滞納の一番大きな理由は「所得が少なくて払えない」ということですが、国民健康保険は保険証がないと医療機関で医療を受けたときに一番痛みがあるので別の問題で深刻なのですが、ここでは、国民年金の保険料の滞納の話です。  特に若い人には誤解があって、「年金制度に入ってない」という人が結構たくさんいます。日本国内に居住する20歳以上60歳未満の人は強制加入なので「入りたくない」は通用せず、全員加入しているけど保険料を滞納しているということになっているのが本当のところです。  所得があるにもかかわらず、意識的に保険料を滞納している人の最大の理由は、「将来年金は貰えない」(と思い込んでいる)と「老後は自助努力で何とかする」です。確かに老後は恐らく自助努力の必要性は出てくると思います。少子高齢化で高齢者の支え手が、現在より少なくなるため支給額あるいは現役世代の所得の何パーセントもらえるかという支給率等がこれから下がっていく可能性があるからです。  しかし、将来年金は貰えないのかどうか、払った保険料分は返ってくるのかどうか、ですが、賦課方式の制度が続く限り返ってくる設計になっています。ちなみに、現在の1ヶ月の保険料(13,300円)を20歳から60歳まで40年間かけると、13,300円×480ヶ月=6,384,000円、年間の年金額は現在797,000円ですから6,384,000円を797,000円で割ると、約8年で元が取れる計算になります。支給開始年齢が65歳なので73歳まで生きれば完全に元を取ったことになります。金利を考慮していないのは、金利が上がるということは物価が上がるということで、年金の支給額は原則として物価スライドが考慮されているためです。  以上のように「年金」という名称から老齢年金ばかりクローズアップされていますが、年金には別に「障害年金」と「遺族年金」があります。若い人にとって老齢は将来必ず来るもので、また支給まで時間がかなりあるため自助努力を考える余裕が在りますが、事故や病気などは予測がつきません。  いずれも支給要件として、保険料の滞納がないことが条件になっていて、まさかのときに医療は全額自己負担、障害が残れば収入がなくなるといったケースが十分起こりうる可能性があります。初診日(はじめて治療を受けて傷病が確定した日)の前日までに被保険者期間がある場合は、そのうち3分の2以上が保険料納付済み期間と保険料免除期間でなければ受給資格がありません。  例えば、大学生のときに国民年金の保険料を納付せず、卒業後厚生年金の適用事業所に勤務した場合、4年以内に事故に遭って、障害が残った場合障害基礎年金と障害厚生年金が支給されません。また、長くフリーターをしていてずっと保険料を滞納している場合も同様です。  ですから、学生のときは、収入がなければ「学生の納付特例」を利用して免除にしておくこと、また収入がない場合は、「保険料全額免除制度」や「保険料半額免除制度」を利用しておく必要があります。免除にしますと、老齢基礎年金は減額になりますが、40年間全部保険料全額免除していても、(税金投入分の3分の)1は支給されますし、「障害」「遺族」は通常通り支給されます。

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