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2012年05月20日
無断欠勤の懲戒解雇について

 「無断欠勤」とは、一般的な解説は「無届欠勤のことをいう」とされていて、届け出がなく、かつ許可を得ていない欠勤のことをいいます。欠勤の理由が何であれ「就労」は従業員の義務的事項ですから、欠勤する場合は事業主の許可が必要になります。

 具体的には、私傷病等で欠勤が必要になった場合、本人(場合によっては家族)から「休ませていただきたい」と電話等で届出があったとします。その時に「何日休む予定のか」ということを聞いておく必要があります。

 もちろん普通の社会人であれば、従業員の方から「何日休ませてください」と申し出ることが常識ではないかと思いますが、そうでない場合もままありますので注意が必要です。

 届け出た日数が経過すれば、更新の意思表示がない場合は当然出勤してくることになりますが、そのまま休み続けた場合は問題になります。すなわち届出日数を経過すれば以後は更新の届け出がない場合は、そこから無届欠勤になります。

 無断欠勤にしないためには、直属の上司若しくは担当部署から欠勤の状況について調査(要は欠勤している本人に対する問合せ)する必要があります。そのままほっておいても、病気が治ればシレっと出勤してくる人もありますが、その無届期間の取扱いをどうするのか、悩むことになってしまいます。給料を支払わなければいいというようなものですが、会社のルールはそういったルーズな運用から崩れてくるものなので、しっかりとした運用を行うべきだと思います。

 

 さて、多くの会社では就業規則において懲戒解雇の項目に、『2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合』と記載されています。

これは労働基準法第20条第1項及び第3項に「労働者の責に帰すべき事由に基づいて」即日解雇をする場合は、行政官庁(労働基準監督署)の認定を受けなければならないと規定されていますが、そのことについて行政通達(昭23.11.11基発第1637号、昭31.3.1基発第111号)に、「除外認定に当たっての労働者の責に帰すべき事由」の中の一つに「2週間以上、正当な理由がなく無断欠勤をして、出勤の督促に応じない場合」と記載されているところによります。

 

 一般的に懲戒解雇をする場合は即日解雇が原則とされていますが、その場合に労働基準法の規定に基づいて、労働基準監督署に対して、「解雇予告除外認定」の申請をしなければなりません。

 それでは、「解雇予告除外認定」を受けなければ懲戒解雇として即日解雇できないのかという疑問をお持ちの方も結構おられるのではないかと思います。

 ご存知のように、「除外認定」は申請してから結果の出るまで1ヶ月程度かかっています。結果が出ないと解雇日が決定できない状態に陥りかねません。また、都合よく「認定」が出れば解雇申し渡した日に即日解雇が成立する(行政通達昭63.3.14基発第150号)とされていますので、先にした即日解雇が無理なく成立したことになりますが、残念ながら「不認定」になった場合はどうなるのでしょうか。また、「除外認定」の申請をしないと即日解雇ができないのでしょうか。

 

 結論から言いますと、「除外認定」を受けなくても解雇予告手当の必要のない即日解雇はできます。

 その理由は、「解雇予告除外認定」の法的な位置付けにあります。厚生労働省労働基準局編「労働基準法コメンタール(上)」(平成23年発行317頁)に、次のように記載されています。

『解雇予告除外認定の性質は、予告手当の支払いを免れようとする使用者の恣意的判断を規制する意図で監督指導上課せられた行政庁の行為であって、解雇予告除外事由に該当する事実が存在するか否かを確認する行為であると解される。したがって、認定は解雇の効力発生要件ではなく、認定申請及び認定決定の有無にかかわらず、客観的に解雇予告除外事由が存在する場合は、予告手当の支払いなき即時解雇も有効に成立する。』

 

 つまり、「除外認定」は解雇を成立させるための要件ではなく、解雇予告除外事由に該当するかしないかの行政庁の確認行為ですから、客観的に「労働者の責に帰すべき事由」がある限り、認定申請・認定決定の有無に関係なく、即時解雇は有効であるということになります。

 また、仮に認定が出る前に即日解雇を行い、結果として不認定が出たとしても、そのことによって即日した解雇が無効になることはないということになります。使用者が行った普通解雇でも懲戒解雇でも、それ自体が合法的かどうかの最終判断は裁判所が行うことになりますので、なされた解雇が不服な場合は従業員の方から裁判所へ訴え出る手続きが必要になります。

 

ただし、即日解雇をして不認定となった場合には、労働基準法第20条に基づく解雇予告手当が、懲戒解雇であっても結果として必要になります。ですから、よほど懲戒解雇理由に自信がある場合でないと、予告手当のない即日解雇はしない方が賢明かもしれません。

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